2013年2月16日土曜日

全曲バイブル回想録 Kansas City

同期再生による比較の有効性を確信した曲である。
モノバージョンとステレオバージョンでは、前半のピアノは同じなのに後半は全く別演奏になっている。耳で判断する場合、違う点の指摘はできるが、同じであると言い切る事は難しい。同期再生では同じである事を証明できる点が画期的であり、これを根拠に推理を巡らすことができる。
この曲でも、前半のピアノが同一で後半はコーラスのみが同一となる事から、後半はピアノだけがミキシング時にリアルタイムで演奏されたもの、という有り得ないような推論を自信を持って導き出すことができた。

更には、レコーディングしたマルチトラックテープが残っていたとしても、新たなミキシングでリリースバージョンを再現することが不可能であると判明した。

2013年2月15日金曜日

NSURLConnectionはキャッシュに注意

NSURLConnectionによるダウンロードのコードは簡単に見つかると思うが、実装にはキャッシュの注意が必要。

NSURL *url = [NSURL URLWithString:@"ダウンロードしたいファイルのURL"];
NSURLRequest *req = [NSURLRequest requestWithURL:url];
NSURLConnection *conn = [[[NSURLConnection alloc] initWithRequest:req delegate:self] autorelease];

こんな感じだと思うが、この場合、NSURLRequestUseProtocolCachePolicyの指定となるためキャッシュが効いて、必ずしも最新情報が得られない。それどころかネットに繋がってなくてもダウンロードが正常終了するので要注意。

NSURLRequestの作成を以下にすればキャッシュをクリアして実際にダウンロードを行う。

NSURLRequest *req = [NSURLRequest requestWithURL:url
 cachePolicy:NSURLRequestReloadIgnoringLocalCacheData 
timeoutInterval:60.0];

2013年2月10日日曜日

全曲バイブル回想録 Blackbird

イントロに何かあるのは10年以上前の自費出版本の頃から分かっていたが、さほど重要な事とは気付かず、この曲は採用しなかった。今回は全曲を記載するという前提があったので、何かネタはないかと注意深く分析せざるを得ない状況だった。

当然、いくつかの偶然が必要だった。キッカケは俗にピーター・セラーズ・テープと呼ばれるリリース前テイク集。もちろん証拠能力はゼロであるが、「イントロが全く違う」という認識を持つことができた。当初、モノバージョンとステレオバージョンとのイントロの相違は、モノバージョンだけリミックスによる差し替えを行なったと判断していた。ところが、イントロが全く違うとなると、リリースされたイントロはどこから来たのか、という疑問が生じてしまう。手っ取り早くイントロのギターと直後のボーカルのバックのギターが同期するように調整してみたら、これがまさかのBINGO!

となると話は簡単。最初のモノミキシングで作成されたリミックス・モノ6(これがピーター・セラーズ・テープなのだろう)はオリジナル演奏のイントロであったが、それは却下。ボーカルのバッキング部分のギターを抜き出してイントロとする正式バージョンがモノとステレオで別々に行われたと結論付けることができた。

全曲バイブル回想録 Words Of Love

楽器の音がユニゾン(同音で複数)になると、個々の分析は半端なく難しくなる。この曲のギターが正にそれだった。モノバージョンとステレオバージョンでギターが分離できたら良かったのだが、この曲ではほとんど相違が無かった。

使用されたギターは12弦ギターである、というのが執筆チームの大勢を占めていた。ただ、長年、ビートルズのギターコピーに全精力を注いできた者として譲れないポイントがあった。リードギターがDコードのアルペジオになる箇所で、12弦ギターなら聴こえるはずの1オクターブ上の音が聴こえない。1弦と2弦は同じ音程の弦を張るが、3〜6弦は1オクターブ上の弦とペアにするのが12弦ギターである。Dコードで3弦のラの音を弾く時は1オクターブ上の音も出るはずである。リッケンバッカーは1オクターブ上の弦を下側にするため、響きが弱くなるという特徴があるが、曲の最初から最後までオクターブで鳴っている形跡がない。これが6弦ギターを主張した根拠である。
「この曲のレコーディングの時は弦が切れてて」なんて証言が出て来たら一溜まりもないが、この記載に関する全責任は私にある。

2013年2月8日金曜日

全曲バイブル回想録 Wild Honey Pie

マーク・ルイソン著となる「レコーディング・セッション」において、何となく想像ができるけど詳細は怪しい、というもののひとつにADTがあった。テープディレイなのだろうが、オシレーターなるもので遅延時間を変更できる、という理解である。

この検証に最適なミキシングをしていたのが『REVOLVER』だった。ボーカルのダブルトラック効果を明確にするために、原音とADTが左右に完全に分離されていたのである。細かな同期を考慮する必要もなく、一方のチャンネルを30ミリ秒ほどズラすと、ボーカルの音像がひとつになった(指紋照合で2つの画像が重なる感じ)。これで謎のひとつは解明できた。ディレイタイムが変更できるテープディレイという理解で問題なかった。

もうひとつ、While My Guitar Gently Weepsで行われたというオシレーター操作という謎もあった。モノバージョンのギター音を聴けば、ディレイ音のピッチが揺れているのであろう事は想像が付くが、ステレオバージョンとの比較では、単にADTのディレイ時間の相違以上のものを聴き分けるのは難しい。ギターの各音が短いので判別し辛いのである。

と思っていたら、意外なところに良いサンプルがあった。Wild Honey Pieに入っているスライドギターのような音である。この音はモノバージョンとステレオバージョンでは全く違っている。つまり、テープにレコーディングされている音ではなく、ADTで作られたものである。しかも音の揺れ方が違う事から、これがオシレーターによって操作された音とみて間違いない。流石に前述のレコーディング・セッション本でのこの曲の扱いは軽く、全く触れて無かったので、めでたく新情報の提供となった。

2013年1月23日水曜日

全曲バイブル回想録 Help!

この曲のモノバージョンとステレオバージョンが違うことは昔から有名だった。ただし、タンバリンの有無と、ジョンの歌う歌詞の一部(andとbut、等)が違う事を指摘しているもので、これが聴き比べによる分析の限界でもあった。

Can't Buy Me Loveの調査で同期再生の効果に確信を持ったので、早速、この曲に取り掛かった。案の定、オープニング部分は全く一緒だった。Aメロ直前にテープ編集に依ると考えられる繋ぎ目がある。ここまでは想定内だった。

ところがAメロを同期させることができない。ボーカルを同期させて違いを探ろうとしていたからだ。もしやと思ってドラムスを基準に同期を試みた。するとテープ編集の痕跡が無いまま最後まで同期できた。ただし、ボーカルは一部の相違ではなく最後まで完全に違っていた。

これには悩まされた。レコーディング記録をいくら読み込んで想像を膨らませてもこの様な相違が生じる筈は無かった。拙著を自費出版した際も編集作業だけで作成可能な方法を考えて結論としたが、モヤモヤしたものが残っていた。その後も多くの時間を割いて分析したが、結局は全曲バイブルに記した呆気ない真実が隠されていた。

ただ、この曲の分析を通して、レコーディング記録以上に正確な調査ができる、という確信を持つことができた。全曲バイブルにおいて、それまでの常識と異なる結論があっても自信を持って記述しているのはこの曲の分析過程での自信に依るものである。

2013年1月18日金曜日

全曲バイブル回想録 Martha My Dear

全曲バイブルでは主としてモノバージョンの優位性を説いているが、『アビーロード』はステレオ盤しか発売されてない。つまり、どこかにステレオバージョンが優位に立った転換点があるはずである。

これは全曲を調査する過程で偶然に発見することができた。
ミキシング作業においては、ボーカルに何らかのエコーが必ず掛かっている。モノバージョンとステレオバージョンのミックス違いが全く無い場合ですら、ボーカルに掛かったエコーの些細な違いはあるものである。私の拙い文章力では、これを表現するのが難しく歯がゆい思いをする事がしばしばあった。
ところが更に困った事に、Martha My Dearではエコーの相違すらなかった。原稿の執筆に当たって途方に暮れていた時、ふと閃いた。8トラック(つまり8種類)の音をミキシングするのに全く相違が無いという、完璧な作業をできるものだろうか?しかもいつものモノバージョンより先にステレオバージョンが作成されている。ここまで辿り着けば答えは簡単である。ステレオバージョンをモノにミックスダウンするようになったのはこの時期ということだ。