2013年2月8日金曜日

全曲バイブル回想録 Wild Honey Pie

マーク・ルイソン著となる「レコーディング・セッション」において、何となく想像ができるけど詳細は怪しい、というもののひとつにADTがあった。テープディレイなのだろうが、オシレーターなるもので遅延時間を変更できる、という理解である。

この検証に最適なミキシングをしていたのが『REVOLVER』だった。ボーカルのダブルトラック効果を明確にするために、原音とADTが左右に完全に分離されていたのである。細かな同期を考慮する必要もなく、一方のチャンネルを30ミリ秒ほどズラすと、ボーカルの音像がひとつになった(指紋照合で2つの画像が重なる感じ)。これで謎のひとつは解明できた。ディレイタイムが変更できるテープディレイという理解で問題なかった。

もうひとつ、While My Guitar Gently Weepsで行われたというオシレーター操作という謎もあった。モノバージョンのギター音を聴けば、ディレイ音のピッチが揺れているのであろう事は想像が付くが、ステレオバージョンとの比較では、単にADTのディレイ時間の相違以上のものを聴き分けるのは難しい。ギターの各音が短いので判別し辛いのである。

と思っていたら、意外なところに良いサンプルがあった。Wild Honey Pieに入っているスライドギターのような音である。この音はモノバージョンとステレオバージョンでは全く違っている。つまり、テープにレコーディングされている音ではなく、ADTで作られたものである。しかも音の揺れ方が違う事から、これがオシレーターによって操作された音とみて間違いない。流石に前述のレコーディング・セッション本でのこの曲の扱いは軽く、全く触れて無かったので、めでたく新情報の提供となった。

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