2013年3月30日土曜日

テネシアン その4(Words Of Love)

Words Of Loveのギターは12弦ギターではないのではないか、というのが自論であるが、では何を弾いたのかを述べる必要があると思う。

現在入手できるVOX AC-30 での検証となるが、NORMALチャンネル(音を歪ませない方の入力端子)に付いているトレブルコントロールをフルアップ状態にすると正にこの音になる。つまり、この音はグレッチとVOXアンプで作れるもっとも高音の効いた音と言える。

具体的なセッティングは、
テネシアン側は、フロントピックアップ、トーンスイッチはセンター
アンプ側は、トレブルコントロールがMAX、ベースコントロールは中央
である。
アンプの影響が大きいのでカントリージェントルマンでも同じような音が出るのではないだろうか。ポイントはリアピックアップより更にブリッジ寄りをピッキングする事である。この音色はフェンダー系ギターのリアピックアップの音に近いことから、バディ・ホリーが弾くストラトキャスターの音色に近づけるために編み出した方法ではないかと推察する。

この組み合わせで試せる方は是非検証してみて頂きたい。

2013年3月24日日曜日

全曲バイブル回想録 テネシアンは使ったの?

レコーディング資料の中でも第一級なのがジョージ・マーティンが残したメモである。高価な書籍の一部なので、とても個人では入手できないが、FromBEAさんがたまたま所有されていて内容を確認することができた。

HELP!のレコーディング・セッションの一部が記録されたもので、アビーロードスタジオに残されているレコーディング記録より詳細である。
たとえば、

John on 12 string acoustic
George on Spanish acoustic
Paul on Bass
といった記述がトラック毎に記載されている。この例で言えば、ジョンはギルドのアコースティック12弦ギターを演奏、ジョージはガットギターを演奏、ポールはベースを演奏、となる。ミキシング作業のために楽器の種類も明確にしていたと思われる。
注目すべきはBassの記載で、まだリッケンバッカーベースを所有していないのでベースと言えばヘフナーを指していることである。
同じように、

Paul on Epiphone
John on Fender
という記載があるが、エピフォンと言えばカジノ、フェンダーと言えばストラトキャスター、と特定できるのでメーカー名で十分ということらしい。
逆に区別が必要であれば以下のような表現がされている。

George on 12 string Rickenbacker
Jumbo Gibson acoustic
J-160Eは愛称のジャンボが使われているが、これはポールのテキサンと区別するためなのかも知れない。

そして問題は以下の記載である。
George on Gretsch
グレッチにはテネシアンとカントリージェントルマンの可能性があるはずだが、区別する必要がないのか、はたまた一方しか使ってなかったのか。そう言えば、映画の中でも、レコーディング・スタジオではカントリージェントルマン、屋外ではテネシアン、と使い分けていた。軽いテネシアンはライブ用(何かあっても安いので惜しくない)、大事なカントリージェントルマンはスタジオでのレコーディング用という使い分けがあったのかも…


2013年3月20日水曜日

全曲バイブル回想録 とくダネ!の小倉さん

一番重要な事を思い出しました。
ビートルズが今なお人気があるとは言え(これはJASRACさんがネット上で音楽を話題にすることを禁止されているので新しい音楽が広まらないという理由も多分にあるとは思いますが)、全曲バイブルがまさかamazonの全書籍で7位にランクするとは予想もしていませんでした。
http://www.rankbank.net/amaran/history/?date=09121200&cat=book&asin=482226341X

この本の企画を頂いた当初は、集大成とはいえども企画本のひとつに過ぎませんでした。ところがリマスター盤が発売されるということで日程計画が変更され、リマスター盤に関する調査も含めるということになりました。リマスター盤は世界中で厳重に管理されるので、一般の方と同様、発売日に購入して調査開始です。同期ソフトの性能を向上させて準備はしていましたが、200曲以上の分析のためパソコンは昼夜フル回転。それでも一ヶ月半を要しました。
そして、めでたく12月に発売されると100位台を推移する快挙。これでも私は十分に満足していたのですが、12月12日の朝に奇跡が起こりました。いつも通りテレビを付けて仕事の準備をしていたら、とくダネ!のオープニングトークの画面に全曲バイブルが!そして小倉さんから大学の研究レベルという最上級のお言葉が(誰かが手を回したのだろうかと真剣に思ってしまいました)。
その後、
先のリンクが示す通り、Amazonのランキングが急上昇。最高位7位を記録しました。恐るべし小倉さん。テレビの宣伝効果を思い知りました。もう小倉さんに足を向けて寝れません。ただ、そのオープニングトークも今は無くなってしまったのが残念です。

全曲バイブル回想録 I Feel Fine

分かっていても書けないネタがある。公式情報のみで得られる情報を提供する、という基本方針があったのでマニアの間では既知でもブートレグ等からのネタは掲載出来なかった。LET IT BEの項は倍以上の情報量があったのだが、ANTHOLOGYや映画から得られる情報のみに止めた。

ただ、ストーリー的に面白いものを以下に仮説として残しておく。

HELP!の頃、ジョージ(とジョン)はストラトキャスターを手に入れている。タイトル曲のレコーディングでは、まずストラトキャスターを使用していたが、例の下降フレーズが弾き辛かったのか音色が合わないと判断したのか、数テイク後にグレッチに持ち変えてしまう。それでも下降フレーズが上手くいかず、更に数テイク後にはバッキングと下降フレーズを別パートとして録音を分けてしまう。これにより、4トラック録音が始まってから最初のリダクションが行われることになる。

I Feel Fineはイントロのフィードバックが別録音ではなく、毎テイクでフィードバック音が再現されている。この曲はキーAとしてレコーディングを開始している。5弦の開放弦はA音なので音の流れとしては丁度良かったのだが、ボーカルのキーが合わなかったのか、J-160Eでは12フレットのEコードが弾き難かったのか、途中でキーをGに下げてしまう。ただ、「5弦の開放弦を共鳴させる」という方法を変更することは出来なかったらしく、フィードバック音はA音のままとなっている。

2013年3月12日火曜日

テネシアン その3

テネシアンをメインで使っていた For Sale 〜 Help! の時期、ギターの音色がかなり特徴的になっている。乾いた音とでも表現すれば良いのか、Kansas Cityのイントロで聴かれるあの音である。当時の楽器と同じ音色でないのは分かっているが、折角テネシアンとVOX AC-30があるので音作りを分析してみた。

他でも述べたがテネシアンは微妙なトーンコントロールができないので、基本的にはアンプ側で作ることになる。セッティングを色々と試してみたが、ヴォリュームをMAX、Bassコントロールはほぼゼロ(低音カット)が一番近い感じがした。アンプのヴォリュームをMAXにしてもさほどうるさく感じない。よくこれで初期のライブをやってたものだと逆に感心する。
ギター側であるが、リアピックアップなのは間違いないとしてトーンのスイッチがどこなのか決まらない。センターか下側だと思うが。
何となく似ているがイマイチしっくり来ないと思っていたが、重要なポイントがあったようだ。今までピッキングの位置をセンターとリアのピックアップの中間辺りにしていたのだが、たまたまリアピックアップ上で弾いてみたら更に音色が近づいた。早速、I'm Downの間奏シーンをチェックしてみたら、正にリアピックアップ上で弾いていた。流石はジョージ、音色には拘っているな〜

ただし、ひとつだけ問題が残っている。Kansas CityやI'm Downで聴かれるサイスティンの無い音はグレッチ特有のミュート機構を使ったものだと思うが、テネシアンには付いていない。つまり、レコーディングに使ったのはカントリージェントルマンの方が可能性が高そうだ。

2013年3月3日日曜日

全曲バイブル回想録 I Want To Hold Your Hand

ドイツ語バージョンの演奏は英語版と同じ、とレコーディング記録に記されていたので、同期再生による調査を始めてから比較的早期に確認した曲である。実際に比較してみると、手拍子も違うし、リードギターの半音進行フレーズも違うし、文章だけでは伝わらない事が多々あると感じた。

90年代後半は手作業で同期作業を行っていたため、少々荒い同期処理になっていた。これは、レコード音源では避けられないワウフラッター(レコード再生の技術的な問題で発生してしまう音の揺れ)から来る精度の限界を考慮していたという面もある。ところが、この曲ではCDでモノバージョンとステレオバージョンが揃うので、可能な限り精度を上げてみた。すると、ミキシング時の手拍子の音量変化を確認することができた。ミキシング作業に於いて何をポイントにしていたかが分かるようになったということである。
同様な事が、We Can Work It OutやHey Judeでも行われており、ミックス違い調査の新たな視点を得られると共に、アビーロードのコントロールルームが随分近く感じられるようになった。